アイウエオ
カキクケコ
                   
太陽がきらめき始めた午後
木々の隙間をすっと通り抜けて
二羽の小鳥が 小さな山小屋の
整えられたベランダへやって来た
軽く柔らかい葉々が翼に触れたようで
みずみずしい空気と
どこからか連れて来た花の香りとがあいまって届いて
二階の窓辺でぼんやりしていた彼女は 穏やかな心地になる
春の間 午睡が日課となっていた彼女だが
もうゆっくりしてはいられない と気づいた
気持ちよく香る小鳥たちと一緒に 出発のときを迎える
【薫風】
52800円(税込)